イナズマイレブン オリオンの刻印~序盤戦、出戻りオタクの悪あがき

こんにちは。最近になってイナズマイレブン最新()シリーズのオリオンの刻印を観始めた自称オタクです。

 

初めに注意事項です。

この記事にはイナズマイレブン オリオンの刻印」が大好きなイナズマイレブンファンの方にとって多分に不快な内容を含んでいます。閲覧をおすすめしません。

 

なお、このブログ記事を書いている人間は最近になって「オリオンの刻印」を視聴しました。なので、当時リアルタイムで視聴していた方たちにとっては「何を当たり前のことをグダグダ言っているんだ」と思われる内容ばかりです。

 

また、この記事を書こうとしたきっかけは、あまりに視聴が苦痛であり、視聴し続けるには肯定できる要素を見出さないとやってられない、という気持ちからなので、

このブログ記事を書いている現在、筆者は未だにオリオンの刻印を完走していません。(まだ23話目、アメリカ戦の前です)

 

以上の理由から、この記事ではオリオンの刻印全話を通しての感想などではありません。「序盤の展開が苦痛で耐えきれず、続きを観られなくなったオタクが自分をどう納得させるか」という葛藤と思考の記録、お気持ち要素を含んだ長文作文です。

 

 

 

 

「オリオンの刻印」、もうこのブログに辿り着いた人なら承知のことだろうけど、概要を少しだけ。

 

イナズマイレブン オリオンの刻印」は2018年10月5日から2019年9月27日までテレビ東京系列で放送されていたアニメ作品で、「イナズマイレブン アレスの天秤」の続編だ。(Wikipediaより)(あえてアニメ作品と表現しているのは、原作となるゲームは未だに発売されていないし、私が語りたいのはアニメの出来に関してだから。)

「オリオンの刻印」は三部構成の戦神シリーズの第二部で、アニメは49話で打ち切られた。

 

ざっくりストーリーをまとめるなら、サッカー日本代表が陰謀と戦いながら世界一を目指す……だよね?(序盤ではそう受け取れるので、そういうことにしておく。なにぶん、まだ全話完走していないので。)

 

アレスの主人公は稲森、灰崎、野坂のトリプル主人公だったが、オリオンではその三人に一星を加えた四人主人公(クアドラプル主人公?)となっているのが特徴。

更に無印時代へのファンサービスで、「アレスの天秤」に引き続き円堂守豪炎寺修也鬼道有人などが多く出演している。

 

 

・・・とまあ、ここまで白々しく書いていたが、アニメが打ち切りだったように、評判はよくなかったらしい。(調べてみて初めて知ったのだが)

 

私も、「なんだこのクソアニメ!?」と耐え切れなくなったため、このブログを書いている。(「アレスの天秤」は普通に楽しめたので、この記事では言及しない。)

 

私は12話で一度オリオンの視聴をやめ、以降のすべての展開とネタバレを読み、当時のファンたちの感想やブログを読み漁った。(ただし、2chはまとめを少し見た程度)

 

そして至った結論が、

 

「これ、予備知識なしで観るようなアニメじゃねえ!!!!!!!!!!!」

 

だった。

 

 

なので、(ないとは思うが)これを読んでいるあなたが、もし「オリオンの刻印」を他の人に勧めようと思っているなら、必要最低限の知識も伝えてほしい。「旧作のキャラも出るよ!」「新キャラたちも魅力的だよ!」「最新作の超次元サッカーだよ!」だけでなく、「こういう見方をするアニメなんだよ」と方向性を示してあげてほしいのだ。

(本音を言えば、無印時代の熱心なファン(特にブレイク組を好きな人)にオリオンを勧めるのはやめてあげてほしい…)

 

私の場合は特に、アニメ配信サイトを漁っていて「懐かしいタイトルがあるじゃん!」と軽い気持ちで観始めたので被害は甚大だった。

 

 

今までのイナズマイレブンだと思って観てはいけないのが「オリオンの刻印」というアニメ作品だったのだ。

 

 

 

まずは、何の知識も持たずまっさらな状態で12話まで観た私の感想をつらつら述べさせてほしい。後々三行でまとめてるので飛ばしていいよ。

 

・第1話「世界への門」

 ざっくり言えばイナズマジャパンの選手発表回。普通に面白いなと感じたし、これからの試合にも期待していた。

 

・第2話「失われた最終兵器」~第7話「仕組まれた罠」

アジア予選大会初戦である韓国戦から、第二試合のオーストラリア戦までの話。

韓国戦はラフプレーが多く(初めの試合だから余計に印象強かった)、何かと陰湿なイメージが付きまとった試合。「実在する国の名前出してこんなサッカーさせて大丈夫か?」と思ったし、正直落胆した。豪炎寺のラストリゾートはかっこよかったが、退場のさせ方が相手の必殺技によるものならまだしも、鏡による目くらましから怪我させられるというもので、「今更になってそんなちゃちいやり方!?」と逆に驚いた。何か不穏なことが試合の中で起こっているのはわかった。

まあ、敵は新キャラですよね~~~~~~~~~~知ってた。イナズマジャパンを内部崩壊させようと画策したり、円堂に怪我をさせようとする一星。君は人としてどうなんだい?と聞きたくなるようなとこまで行ったし、純粋に「旧作の主人公に物理的な害を及ぼそうとした」のが不快だった。どうせイナズマイレブンだから一星にもやむを得ない事情があるのだろうとは察せたが、このキャラの好感度は挽回できるのかとも不安になった。

そして鬼道も不信感を募らせ、一星の排除を決めたオーストラリア戦。三重人格のサタン様は面白かったが、ボールが消えた!とかもうどうでもよかった。鬼道が味方を煽動し、自分のチームメイトにボールを蹴り込む。いくら一星が裏切り者だとは言え、暴力にさらしていいのか。これを円堂がいる試合でやるのか。辛すぎる。こんなのサッカーじゃねえよ…どうしちゃったんだよ鬼道……。ただただ苦痛。もう最後には「これを観た鬼道ファン、かわいそうにな」と思っていた。今作の主人公である稲盛の言葉がむなしすぎる。何も響かない。虚無。脚本のバカ野郎。鬼道の退場の仕方も「新キャラにヘイト向けさせるの上手ですね~~~~」という感想しか出てこなかった。このあたりで本格的にこのアニメに対する信頼がなくなってきた。

 

・第8話「イナズマジャパン最大の危機」~第12話「一星、最後の選択」

野坂が合流する第三試合ウズベキスタン戦から、一星が覚醒する直前のサウジアラビア戦までの話。

 

私の好きだったイナズマイレブンのサッカーは死んだ。

 

グリッドオメガを味方に使わせる野坂にも失望したし、相手を舐め腐ったような点の取り方。そしてそんなサッカーをした日本代表に、「あいつらはちゃんとサッカーをしている」とウズベキスタン選手に言わせた脚本。もうだめだ。私の好きだったイナズマイレブンのサッカーは死にましたよと公式から突き付けられてしまった。「皇帝じゃなくてもいい、サッカーがしたい」からの「僕は戦術の皇帝だ」はギャグだったとしても笑えないし、こんなサッカーがしたいなら主人公チームからいなくなれと思った。気持ちよくサッカーを見させてくれ。ウズベキスタン戦後も野坂TUEEEEEEE!!!みたいな展開だったと思う。怒りすぎて、一星の過去を明らかにされても「へー、そうなんだ」ぐらいの感想しか出てこない。「可哀そうな事情があったら何やってもいいのかよ」という灰崎(吉良だったかも)の台詞があったが、確たる証拠もなかった一星を裏切り者だからとシュートを打ち込んだ二人にブーメランすぎて笑ってしまった。そこが一番面白かった。もう、一星の好感度まで手遅れだった。イナズマジャパンのメンバーとそんなに交流したわけでも心を開いたわけでもないのに、主人公たちは「主人公らしく」一星を助けようとする。なぜか一丁前に葛藤する一星。そして退場する吹雪と風丸。この試合がどういう結末を迎えるのかが怖くて、12話で視聴を止めた。

 

 

 

と長々言ってきたが、三行でまとめると、

 

ひたすらキャラへのヘイトやイナズマイレブンのサッカーを失った失望で、たとえオリオンにいい面があったとしても拾えない、拾う余裕がなかった、というのが正直な感想だ。

 

 

そこで「クソアニメかよ」で終わらせられるならよかったのだが、私は自分でも気づかないほどイナズマイレブンシリーズに思い入れがあったようで(なにしろ中学時代に一番熱中したコンテンツだ)、少しでもいいところを見つけようと頑張ってみたのである。

 

 

で、当時の情報を(インターネット弱者なりに)集めてひっくり返ってしまった。

 

それが、主に次の二点。 

 

サッカーにサスペンス要素を取り入れた「オリオンの刻印」

 

 サスペンス!?!?!?!?!?!?

 

 その発想はなかった……イナズマイレブンでサスペンスをするとは思わなかった……。

 この方のブログによると、どうやら「イナズマイレブンフェス」のパンフレットでの社長の発言だそう。(当時のネット外での発言は、すべて伝聞になってしまうのであしからず)

 https://nagatsukiekifu.hatenablog.com/entry/InazumaOrion-49#%E3%82%B5%E3%82%B9%E3%83%9A%E3%83%B3%E3%82%B9%E8%A6%81%E7%B4%A0%E3%81%AB%E6%B0%97%E5%90%88%E3%82%92%E5%85%A5%E3%82%8C%E3%81%9F%E7%B5%90%E6%9E%9C

 

 

まあ私はその発想自体を否定も肯定もする気は起きないのだが、それより前に

 

このアニメを観てこれが「サスペンスものである」もしくは「サスペンス要素を取り入れている」と気づける視聴者がどのくらいいるのか?

 

 もちろん、上記のような発言を知っている熱心な古参ファンを除いて。

 

 私は昔のイナズマイレブンのイメージに引きずられて視聴していたから(無印時代のファンは少なからずそうだと思っている)、何か問題が起こったとしてもサッカー(を通した心の通い合い)で解決していくのが主軸になると思っているし、理論よりも勢いで問題を解決していく(頭を空っぽにして観る)アニメだと思って観ていた。

 

これと併せて驚いたのが、

 

 

「オリオンの刻印」のキャラクターたちはそれぞれ人狼ゲームの配役に当てはめられている

 

 

 人狼ゲーム!?!?!?!?!?!?!?

 

 マジか~~~。(なんで人狼ゲームしてんだよ…)

 

 ちなみに、人狼ゲームというのは、アメリカの会社が発売した「汝は人狼なりや?」という会話と推理を中心にしたパーティーゲームが元になっており、それに類似したルールのゲームを総称したもの。(Wikipediaより)(また、「汝は人狼なりや?」はロシアのゲームを参考に作られたらしいので、アニメのロシアチームと重ねているところもあるのかもしれない。未視聴なのでわかりません。)

 

 私は「人狼ゲームを知っていたけれど、イナズマジャパンが人狼ゲームをしていたことには気づけなかった」視聴者だ。

 だが、サスペンス要素の発言と違ってこれにはちゃんとアニメ内で言外に表現されていたのだ。

 

 

 エンディングに。

 

 

 き、気づかなかった……。

 

 私は一度見たエンディングは飛ばしてしまうので、「またコスプレしてるんだな」ぐらいにしか思わなかったのだ。一気見の弊害である。(だって、「アレスの天秤」もコスプレエンディングだったけど意図が読み取れなかったし…)(アレス放送当時の考察が見当たらなかったので、もし知っている人がいたら教えてください。)

 まあこれも人狼ゲーム自体を知っていないと意味がわからないし、何より本編で(少なくとも12話までの三か月近く)人狼ゲームの「じ」の字も言わないわけだから、制作側は意味が分かる人にだけ伝わればいい、というスタンスだったのではないかな…と思う。たぶん。それとも、今の小中学生にとって人狼ゲームはメジャーなものなのだろうか……。(それか、SNSでの考察祭りみたいなのを期待したのかもしれない。)

 

こんなツイートを見つけた。

 

https://twitter.com/nkmy_eagle/status/1048413679094398976

 

 おそらく、脚本が意図したのはサスペンス要素=人狼ゲームなのだと思うのだが、(それが表現できているかは別として)これを知っていれば、少なくともイナズマジャパンの人間関係が過去作のものよりギスギスすることは予想がついたのでは、と思う。私は気づけなかったけど。気づけなかったけど!!

(それに人狼ゲームのゲーム性自体が参加者同士の疑心暗鬼を要求するため、視聴者にもキャラクター側の情報が出し渋られていたように思える)

 

そしてこの点が個人的にもっとも重要なのだが、

 

人狼ゲームの勝利条件は、「村人に交ざっている人狼を見つけ出し、処刑すること」である。(これは村人陣営の勝利条件であり、逆に人狼陣営は処刑されずに村人や他の役職の人間たちを襲撃し続けていけば勝利となる。)

 

 

この流れを承知の上で「オリオンの刻印」を観ないと、「なんで脚本はこのキャラクターにこんな動きをさせたのか」が全く理解できないのだ。(解像度が上がらないとも言える。)

 

 

さて、以上の二点を踏まえて、第1話~第7話までの「オリオンの刻印」を振り返ってみる。

 

エンディングで誰がどんな配役を当てはめられていたのかは、こちらを参考にした。

 https://twitter.com/nkmy_eagle/status/1055830016875872256

 

ここまで読んで、人狼ゲームを知らなかった人は一度Wikipediaやリプレイ動画で人狼ゲームの流れを確認してもらえると以降の内容が伝わりやすくなると思う。

 

 

 第1話から不穏な空気を出していた一星は、イナズマジャパンという村に紛れ込んだ人狼だと視聴者に示している。これはわかりやすい。

第2話から4話までの韓国戦。最初に犠牲(退場)となったのは狩人役の豪炎寺。この退場には一星は直接絡んでいないので、正直人狼ゲームはこの段階で破綻していると思っているのだが、とにかく鬼道はFFIに不信感を抱いたようだ。

第5話は一星が円堂に狙いを定め危害を加えようとする、まさに人狼らしい動きを見せる。そして、占い師役の鬼道はイナズマジャパン(村人たち)の中にいる人狼(=裏切り者)が一星だと推理する。(だが、ここで一星は円堂から鬼道に狙いを変えている。)ここから7話まで、人狼役である一星と、それを見破る占い師役の鬼道をメインに「人狼ゲーム」が始まっていく。試合中に鬼道は灰崎(狩人)と吉良(狂人)を使って一星の処刑(=排除)に乗り出すのだが、正直この人選もエンディングで示唆されている役職に当てはまらないので、私にはうまく解説ができない。(狩人は村人陣営を守る役職であり、狂人は人狼陣営なので二人の動きがちぐはぐに思える。)

そして試合終了後、逆に人狼側に噛みつかれ退場したのが、占い師の鬼道だった。

 

こうして7話までの動きを人狼ゲームとして見てみると、少しは脚本が何をさせたかったのか理解できそうな気がする。(たぶん)

 

一言で表すなら、7話までの動きは人狼陣営と村人陣営の攻防なのだ。

まず犠牲となった狩人の豪炎寺。(野坂がいない現状で)唯一村人に交ざる人狼の正体を見破ることができる占い師の鬼道。そして推理パートが終わって、処刑パート(試合)が始まり、処刑に失敗した鬼道は逆に人狼に襲われて犠牲(退場)になった。

 

……とまあ、ここまで把握はできるのだが、これが初見で理解できなかった理由は「今作のイナズマイレブン人狼ゲームを意識している」という前知識がなかったのと、「並行してオーストラリア戦をやっている」せいで人狼ゲームとしての動きが非常にわかりにくくなっていたからだと思う。

しかも、オーストラリア戦にも「ボールが消えて見える謎」というミステリー要素が組み込まれているので、視点を固定していないともうぐっちゃぐちゃなのだ。(シューズに刃物を仕込んだりといったプレーの悪質さも目立つ。)

 

 

人狼も処刑する」 「試合にも勝つ」 どっちもやらなくっちゃあいけないってのが 「脚本」のつらいところだな

 

 

ようやく言える。

 

 

 

 

 

なんだこのクソ脚本。

 

 

 

 

 

あれなんですよね、脚本のやりたいこととやらなきゃいけないことが噛み合ってない

だから人物描写はおざなりになってしまっているし、試合にも集中できない。

 

特に「あかんやろ」と思った二点を挙げてみる。

 

・そもそもが人狼ゲームとして成り立っていない。

 

 人狼ゲームは、それぞれ自分が何の役職であるのか把握している状態で始まる。しかし、オリオンの使徒としてイナズマジャパンを陥れようとする一星と、それを阻止しようとする鬼道はともかく、他のメンバーは自分がどんな役割を担っているのかわかっていない(描写されていない)。全員人狼ゲーム初心者か?????まあサッカー選手だもんな(?)

 人狼ゲームには役職によって特殊な能力があるし、プレイヤーはある程度定石の動きを要求されるゲームだ。(例えば、占い師は人狼を見破れるという村人陣営にとって重要な能力をもっているので、村人たちは占い師を守ろうとする。狂人は村人陣営のフリをして人狼の味方をしなければいけないし)

 なので、占い師である鬼道を村人陣営であるメンバーが誰も庇おうとしないのは(人狼ゲーム的に)不自然だし、「村の中に人狼がいるので身を守りましょう」という意識すらほとんどのメンバーは持っていない。(この点に気づいていたら、ドキドキしながら展開を見守れたのか?もしかしてこれがサスペンス要素なのか?)

 簡単に言えば、人狼ゲームもどきが開始した時点では、ほとんどのメンバーが土俵に立ててすらいないのだ。

 しかも、人狼ゲームは、処刑を宣告された者に抵抗の余地はない。吊るされて(処刑されて)初めて「本当に敵だったのか味方だったのか」がわかるのであり、その後も人狼の襲撃が続くのであれば、犠牲者は2人生まれることになる。つまり人狼が村人陣営に「お前は人狼だ(作中の言葉で言うなら裏切り者)」と当てられたのに生き延びていること自体がおかしいのだ。(オーストラリア戦の場合、稲森はともかく、人狼の一星は吊るされていたと解釈している。(物理的な排除には失敗したが、本来の人狼ゲームでは言い当てられた時点でゲームオーバーなので)そして、鬼道を噛み殺したのも明確に一星であり、人狼ゲームとしては完全に破綻している。)

 

まあサッカーアニメに本格的な人狼ゲームを求めるのは本末転倒だし、意識している程度と受け止めるのが正しいのだろう。(それなら人狼ゲームの要素を入れるな!!と怒りも湧いてくるが)

 

そして、こうした人狼ゲーム要素を取り入れたが故に、

 

 

・キャラクターをキャラクターの性格ではなく脚本の都合で動かしている

 

 

これが透けて見えているのが、もう純粋に脚本が下手くそ。今までの過去作も、すべての回が上手くキャラクターを動かせていたとは決して思わないが、「オリオンの刻印」はこれがあからさますぎて、しかも失敗に終わっているのだ。

これは「キャラクターを雑に扱っただけ」で済ませられるような問題ではなく、前述したような(サスペンスだか人狼ゲームだかの)動きをさせようとして見事に失敗した結果、視聴者を置いてけぼりにし、キャラクターの魅力は発揮できず、ストーリーを面白くすることもできず、サッカーの試合を満足にもできず、ただただ虚無が残ったのである。

 まあメタ的に考えれば、鬼道と役割が被る野坂を入れたいがために鬼道を早く退場させたかったのだろうし、本当に一星が退場したら話自体が終わっちゃうからこの結末になったのだろう。(この境地に至るまでにかなりの時間を要したが)

 

だが、人狼ゲーム通りのストーリー展開はしないくせに、視聴者にも情報を開示しない姿勢はどうだろうか。各キャラクターの描写も十分にできず、対立構造を説明したりトリックを説明するのに尺を使いすぎている。一星へのヘイト、鬼道へのヘイト、灰崎や吉良へのヘイト。もっと言えば、状況がわからないのに鬼道たちに「こんなのサッカーじゃないよ」と言う主人公へのヘイト。各キャラクターに感情移入して視聴している人たちは、この人狼ゲームをどのような気持ちで観ていたのだろうか。人狼ゲームをベースにするなら、「チーム内で互いに危害を加えあう」という展開は不可欠だし、チームメイト同士の疑心暗鬼を煽る。しかし、それは本当にイナズマイレブンを視聴するファンやターゲット層に合っていたのだろうか。私には、その発想の段階で失敗していたように思える。

 

重ねて言うが、この話の運び方ではキャラクターの魅力が満足に描けないのだ。スポットライトが当たらないキャラクターは、残念ながら今までもあったし、キャラクターの数が多いイナズマイレブンでは避けられないことでもあった。しかし、「オリオンの刻印」の、特に序盤は、新キャラクターの好感度を上げるより、不信感や反発心を募らせる描写が目立っている。そこが好きと言う人を否定するつもりはない。しかし、負の描写が続く中で退場した旧作キャラのファンの感情は、どうなるのだろうか。

 

人狼ゲームのような展開はイナズマイレブンじゃなくてもできる」し、むしろ「イナズマイレブン」というブランドのイメージが足枷になっていたのではないだろうか。もし「オリオンの刻印」がイナズマイレブンシリーズでなかったなら。全く別のサッカーアニメだったなら。私はここまでミスリードされることはなかったと思うし、ある程度楽しめたと思う。

 

完全に蛇足ではあるが、旧作キャラを登場させたうえで「これは旧作キャラのガワを被った別キャラなのだから過剰に反応するな」と言うのはあまりに暴論ではないだろうか。キャラクターの雑な扱いについては過去作でもあった、とは言うものの、コンテンツ側に成長を期待するのは駄目なことなのだろうか。旧作ファンの思いも大切にしてほしい、その上で新しいものを作り上げてほしいと願うのは高望みなのだろうか。

私はいわゆる出戻りだが、当時「オリオンの刻印」を視聴していた旧作キャラのファンたちを思うと何とも言えない気持ちになる。(傲慢なことを言っている自覚はある)

そして女性層を意識するのなら、なおさらキャラクター性を大事にするべきだった。(すべての女性ファンがそうだとは言わないが)自分の愛したキャラクター像を納得する時間もないまま公式からぶち壊される、というのはコンテンツから離れる理由としては十分ショッキングな出来事だと思う。それに、過去作品は小中学生・少年向けのストーリー展開でも多大な支持を受けていた。ファンが何を作品に期待していたのか、(新要素を加えるにしても)それに応えられなかった公式のリサーチ不足だという印象がぬぐえない。結局このサッカーアニメはどんな層をターゲットにしていたのか?とにかく中途半端な作品になってしまっているのが残念だ。

 

 

 

さて、このブログを書こうと思ったとき、本当は7話以降についても語る予定だったのだが、

自分でも想像以上に長くなり、(不満はまだまだ尽きないが)まとまりのない冗長な文章になってしまったのでここで終わろうと思う。

 

 

イナズマイレブン オリオンの刻印」を初めて視聴したとき、きれいな思い出になっていたイナズマイレブンを壊されてしまったという失望と怒りに包まれた。懐古厨になってしまった。しかし、内容を反芻してこうして文章に書きだしてみると、少しは肯定的に受け止められる部分(余裕?)も出てきた。

 

イナズマイレブンのサッカーとは何なのか。アレスとオリオンで主人公(の一人)である稲森も、円堂や天馬と同じくサッカーを愛する少年であり、彼が愛する「サッカー」も、過去作の主人公たちと変わらないのだと思う。(正直、主人公の掘り下げが薄いため、アレスでもオリオンでも「サッカーに対する熱意」は残念ながら過去作ほど伝わってこない)

しかし、特に「オリオンの刻印」からは、脚本が主人公たちにそのようなサッカーをすることを許さないのだ。(愛するサッカーを取り戻すにはアニメの方針自体を変えなければいけないという、不思議な構図だ…)

もちろん、過去のイナズマイレブンにはなかった新しい要素が加わっていることに肯定的、面白いと感じる視聴者もいるだろうし、私も新キャラたちは魅力的だと感じる。だから、新キャラたちの魅力が深く描写されないことをとても残念に思う。(これは23話まで観ての感想だ。)

 

13話の一星の覚醒の話はどんでん返しの連続だったし、中国戦ではようやく(今シリーズ初めての)正々堂々の超次元サッカーができていた。中国戦は本当に楽しめた。

 

もしかしたら、人狼ゲームの処刑とは、一星を排除することではなく一星を救い仲間として迎え入れることだったのかな、とまで思うようにはなってきている。(それにしたって鬼道たちの動かし方は肯定できないが)

 

 

 

まあ、結局グダグダとここまで述べてきたが、「序盤がひどい」という感想に変わりはない。しかし、どうして自分がひどいと感じたのか、については少なからず整理できた(と思う)し、ぶっちゃけ思う存分書き殴ることができて満足している。

 

ちなみに、このブログは人狼ゲームへの指摘ばかりで、当然色々と足りない部分がある。(何より、まだオリオンを観終えていないので「それは伏線だが?」ってツッコミもあると思う)

ファンの方々が細かく分析されているので、全話を通しての「オリオンの刻印」や、サッカーの試合そのものへの指摘はこれらのブログを見てほしい。(特に、このブログでは指摘しなかったミステリー要素とか。)私も参考にさせていただきました。

 

https://nagatsukiekifu.hatenablog.com/entry/InazumaOrion-49

 

https://siroro.hatenablog.com/entry/2019/09/29/114657

 

 

そして、万が一にもこのブログ記事を読んだ人がいて、億が一にもあなたが「オリオンの刻印」を観ようかな、と言っている旧作からのファンを見かけたら、「オリオンはサスペンス要素があるんだよ」と伝えてほしい。完全に私の独りよがりな意見なのだが、心構えを少し変えるだけで、「オリオンの刻印」は格段に解像度が上がる。それ最初に知りたかったよ!!!!と叫んだ私のように情弱なオタクもいるのだ。(私だけかもしれない)

 

 

 

で、こんなお気持ちブログを書いてはいるが、私はまだ「オリオンの刻印」を語るような存在ではない。(笑うところ)

最終回を観ながら「イナズマイレブン最高!!!!!!!!」と叫んでいる可能性も残っているのだ。

 

熱い掌返しを自分に期待します。ここまで読んでくれた人、ありがとうございました。